月は家こゝろは主と見る時は
なほかりのすまい也けり

私たちの真の家は心（マインド）ではない。心は旅の宿にすぎないーー夜の宿、一夜の宿にはふさわしい。が、憶えておきなさい。朝になれば私たちは行かねばならない。心はあなたの真の家ではない。心が創りだすのは夢だけだーーどうして夢があなたの真の家でありえよう？心が創り出すのは欲望だけだーー欲望のなかで、どうして生きることができよう？

人々がやっていることはそれであり、彼らが苦しんでいるのはそのためだ。彼らは欲望のなかで生きようとしている。彼らはありもしないもののなかで生きようとしている・・・・

ちょっと自分の心（マインド）見守れば、あなたは要点を見抜くだろう。あなたは過去のことを考えているか・・・それはもはや存在していない、あなたはエネルギーを無駄にしている・・・あるいは、まだ存在しれいない未来を心に描いて、またもや自分のエネルギーを無駄にしているか、そのどちらかだ。

ここに生きなさい！今を生きなさい！今こそ、わが家だ。

だが、心があなたが今を生きることを許さない。もしあなたが＜今ここ＞にいたら、心は消える。もしあなたが心のなかにいたら、あなたにとって＜今ここ＞は存在しない。

月は家・・

月は、夢見の象徴だ。狂った人々が精神異者（ルナティック）と呼ばれるのはそのためだーー彼らは月に住んでいる。彼らは月を通して生きている。月は、あなたの夢見る能力だ。月はあなたの中で空想を創り出すーーそれは現実ではなく、仮想のものだ。・・

心は、虚偽と共にあってこそ主人でありうる。心は、嘘と共にあれば完全にくつろぐ。それは、真実と共にあっては怯える。・・心（マインド）は、幻覚と共にあっては完全にくつろいでいる。そして、心はあらゆる種類の夢を創りだす。いいかね、夜だけでないーー昼でさえもだ。あなたが十全に目を覚ましているとき・・・少なくとも”あなた”は、自分が十全に目を覚ましていると思い込んでいるーー。が、それはありえない。なぜなら、十全に目を覚ました人はブッダになるからだ。ーー見守りなさい。ちょっと目を閉じて、内側をのぞき込みなさい。そうすれば、あなたは夢のみがそこを流れているのを見るだろう。・・

そして、心（マインド）は、夢がそこにある場合のみ、主人でありつづけることができる。それゆえに心は、新しい幻想を創り出す薬物、幻覚剤をつねに探し求めている。それは新しいものではないーーそれは、現代の若者たちとは何の関係もない。それは人間と同じだけ古い。それは『リグヴェーダ』のなかに存在していた。それは”ソーマニラス”と呼ばれた。それはあの時代のLSDだった。

人間は、いつの時代も、薬物を探し求めている。なぜなら、薬物はあなたの夢見る能力を促進させるからだ。・・だが、その手のサマーディは、たんなる夢にすぎない。それはあなたを変容させない。それはあなたを変えない。それはあなたの実存に根本的な変換をもたらさないーーあなたは同じままだ。あるいは、あなたは前よりさらに低く落ちるかもしれない。あなたは退行するかもしれない。

月は家こゝろは主と見る時は
なほかりのすまい也けり

もしあなたが理解しなかったら、夢が現実になる。もしあなたが理解すれば、あなたが現実そのものと呼ぶものが夢になる。道歌の要点を見てごらんーーそれはもっとも含みのある道歌のひとつだ。もしあなたが理解しなければ、そのときには、夢ですら現実であるかのように見える。もし、あなたが目覚めたら、もしあなたが注意深くなり、ものごとに見入れば、あなたがつねに現実だと考えてきたものですら、もはや現実ではない。そうなったら、すべてが夢だ。

「世界は夢だ」と仏陀が言うのは、そういう意味だ。いいかね。彼はそれを非難しているのではない。彼は「それを放棄しなさい」と言っているのではないーーどうして夢を放棄できよう？彼は「それから逃げ出しなさい」と言ってはいないーー夢から逃げだして何になる？彼はただ「それをあるがままに知りなさい」と言っているだけだ。

そして、いいかね、多くの人々が私に尋ねる。「もしそれが夢だとしたら、そして、私たちがそれが夢であることをほんとうに知ったら、それは止まるでしょうか？」と。
それは、止まらない。なぜなら、それは集合的な夢だからだ。あなたは、それを理解することで、自分の私的な夢を止めることはできる。あなたは集合的な夢を止めることはできないーーそれらはあなたのみに依存しているのではない、それらは集合的な心に依存している。・・・

だが、ひとつのことが変わる。つまり、あなたはくつろぐ。あなたは動揺しない。あなたはかき乱されない。物語は続く、あなたは超然としたままだ。あなたと物語のあいだには距離がある。あなたはそのなかの登場人物にはならない。あなたは、そのなかの何ものにもとらわれない。・・