＜本当の豊かさとは何か？ 誰もが振り返るとき＞

今回の月食は、おうし座で起こります。おうし座では現在、「幸運と拡大の星」と呼ばれるラッキースター・木星が滞在しており、そのすぐそばで月食が起こります。おうし座は物質や金銭、所有に関連のある星座。本来ならこの部分が大きくクローズアップされ、豊かさにスポットライトが当たるのですが、木星は年末まで「逆行」というイレギュラーな動きをしている最中でもあります。

ストレートに豊かさと読むよりは、「自分にとっての豊かさとは何か」「そもそも豊かであるとはどのような状態なのか」と価値観を問い直す時期と言えるでしょう。月食は、満月のスペシャル版。「物事が一定レベルまで到達し、振り返りと修正を行うとき」という満月の意味合いが、部分月食になることで「いったん陰り、そしてまた光を取り戻す」という意味が加わります。物質、金銭、所有──そういったものについて、価値観の見直しが行われ、自分らしい豊かさはこれだと確信を持つに至る。そんな日となるのではないかと思います。部分月食は、皆既月食のように「一度、光が失われる」ということはなく、光は見え続けています。私たちの視界は、明るいままです。

折しも、食品を中心に生活に必要なあらゆるものが値上がりしているのを、誰もが実感していることと思います。海外と比較して安すぎると言われていた外食産業も、苦境に立たされています。でも手取り収入はずっと横ばいで······木星逆行だけに、過去を振り返りつつ「何をどうしていれば、こうはならなかったというのだろう」「どんな判断を下せば、豊かだと思える社会になっていたのだろう」といった問いが頭をよぎる人も多いはず。

ホロスコープを星座で区切ったとき、おうし座の真向かいにはさそり座が巡ります。おうし座は「手に入らないことを恐れる」星座で、さそり座は「失うことを恐れる」星座です。そのさそり座には今、太陽とコミュニケーションを司る水星、闘いの星である火星が非常に近い位置にあり、声を上げるぞ、闘うぞという強い意志を感じさせます。情報から、事実から、目を背けないこと。「手に入る」ことだけが豊かさではないし、「失わない」という状態もまた豊かさとは限らないのだと思ったとき、バランスのいい価値観がふっと心に宿るように思います。

満月、月食は、月と太陽が向き合うという位置関係です。（ご参考までに、新月は「重なる」位置関係です）太陽にはうお座に滞在中の土星が、調和の角度を取っています。土星は「試練と制限の星」と呼ばれるように、物事を制限、縮小させるはたらきがあります。木星の「拡大」と逆ですね。

ちなみに、この土星も木星と同じく逆行中であり、「制限する、縮小するという一辺倒ではなく、どのくらいの力加減がベストなのか見極める」というフェーズに入っています。世の中はもう、コストカットや節約、努力ばかりではどうにも立ち行かないところにまで来ているのだと思います。「本当の豊かさとは何か」を考えるとき、私たちに必要なのは物質や金銭ばかりではなく、「どう生きるべきなのか」というマインドの変化なのかもしれません。ただ、決して暗い未来ではないと私は信じています。先程も申し上げた通り、今回は月が地球の影にすっぽり隠されてしまう皆既月食ではなく、ほんのり暗くなる部分月食です。光は、私たちのもとに投げかけられ続けています。